あるお同行がその師に向かって「私の胸のうちは薄紙一重が取れかねて困り果てております」とうったえますと、師の仰せには「誰でも、ここまではやっと仕おおせたが、ここで薄紙一重が取れたならばといつも思う。しかし、それは思いちがいである。助かる身になって助かるのではない。助からぬ者を如来様が助けて下さるのである」と。
この薄紙一重が取れかねるのも、自分で取ろうとするからです。それが取れないのも、取ったら如来から助けてもらうと思うからです。自らで何事かを為し得ると思うからです。如来にたよることが、いかに正しいかを知らないからです。助からない者をこそ助けようとする如来の求めに思い当たらないからです。弥陀のなされるままにせしめられるのが当流です。お三部経のおこころはこれよりほかはないのです。
私たちの眼からみれば、こんなことでは私というものは救われる筈がないと思われるでしょう。しかし如来の御心には、こんなことというようなものはないのです。
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