(中略)
仏本この荘厳清浄功徳を起したまへる所以は、三界を見そなはすに、これ虚偽の相、これ輪転の相、これ無窮の相にして、蚇蠖(しゃっかく)[屈まり伸ぶる虫なり]の循環するがごとく、蚕繭(さんけん)[蚕衣なり]の自縛するがごとし。
(曇鸞大師 往生論註 註釈版聖典七祖篇57頁)
浅井成海師の訳(三界~)
我々の世界は偽りに満ちており、その偽りの世界を生きる苦しみや悲しみは、繰り返し生じて絶えることがない。ちょうど尺取り虫が丸い輪をまわり続けるように、あるいは蚕が、自らの口から糸を出して自分の身体をがんじがらめに縛って身動きができなくなり、やがて熱湯につけられるようなものである。
善導大師の「機の深信」にあてはめるならば、
虚偽の相=現にこれ罪悪生死の凡夫
輪転の相=昿劫よりこのかたつねに没し、常に流転して
無窮の相=出離の縁あることなし
となります。